忙しい一日を洗い流す:お風呂・シャワーでのマインドフルネス
忙しい一日の終わりに、心と体を整える時間を持つこと
多忙な毎日を送る中で、一日の終わりにお風呂やシャワーで体を洗い流す時間は、ささやかではあっても大切な習慣です。しかし、その時間を単なる「次の準備」のための流れ作業にしてしまい、「今日も疲れたな」「あれもこれも終わらなかった」と頭の中で考え事を巡らせながら過ごしている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
体は洗えても、心はまだ今日の忙しさや将来の心配事の中にいる。そんな状態では、せっかくのリラックスタイムも十分に効果を発揮できません。
そこで今回は、普段何気なく過ごしているお風呂やシャワーの時間を、意識的に「心と体を整えるマインドフルネスの時間」に変える方法をご紹介します。特別な準備は何もいりません。いつもの習慣に、少し「気づき」を加えてみるだけです。
お風呂・シャワーで実践するマインドフルネス
お風呂やシャワーは、五感や体の感覚に意識を向けやすい場所です。温かいお湯の感触、水の流れる音、石鹸やシャンプーの香りなど、さまざまな刺激があります。これらの感覚に意識を向けることで、自然と「今、この瞬間」に注意を向ける練習ができます。
具体的な実践ステップを見ていきましょう。
ステップ1:意図を持つ
まず、お風呂やシャワーに入る前に、「この時間は、心と体を洗い流し、リラックスするための時間にする」という意図を軽く持ちます。完璧でなくても構いません。ただ、そのように意識するだけで、時間の質が変わってきます。
ステップ2:体の感覚に気づく
浴室に入り、お湯を出したり、湯船に浸かったりする際に、まず体の感覚に注意を向けます。 * 肌に触れる水の温度はどう感じますか?温かいですか、それとも少し熱いですか。 * シャワーのお湯が体に当たる感触はどのようなものでしょう? * 湯船に浸かった時の、体に水圧がかかる感じ、浮力による体の軽さ、お湯に包まれる感覚はどうでしょうか。 * 一日の疲れが溜まっている体の部位に気づいてみましょう。肩や首の凝り、足のむくみなど、ただその感覚を観察します。
ステップ3:音に気づく
次に、耳から入ってくる音に注意を向けます。 * シャワーからお湯が出る音、浴槽にお湯が注がれる音。 * 自分の呼吸の音。 * 水の流れる音。 * 浴室の外から聞こえる音は、今は脇に置いて、浴室の中の音に耳を澄ませます。
ステップ4:香りに気づく
鼻から入ってくる香りに注意を向けます。 * お湯の湯気、シャンプーや石鹸、ボディソープの香り。 * もしアロマオイルなどを使っている場合は、その香り。 * 人工的な香りが苦手であれば、湯気や水の無臭さにも気づきを向けられます。
ステップ5:思考や感情に気づく
さまざまな感覚に意識を向けながらも、頭の中には今日の出来事や明日の予定、心配事などが浮かんでくるかもしれません。それは自然なことです。思考や感情が浮かんできても、「あ、今、今日の仕事のことを考えているな」「少しイライラしているな」というように、ただそれに「気づき」、 judgementせずに手放します。雲が空を流れるように、思考や感情もただ流れていくのを眺めるイメージです。再び体の感覚や音、香りに意識を戻しましょう。
ステップ6:呼吸に気づく
最後に、呼吸に意識を向けます。湯気の中での呼吸は、少し湿っていて、温かく感じられるかもしれません。ただ、吸う息、吐く息を観察します。深く呼吸しようと無理する必要はありません。自然な呼吸に寄り添います。
日常での活用シーンと継続のヒント
このお風呂・シャワーでのマインドフルネスは、日々の習慣に組み込みやすい実践法です。
- シャワーの短時間で: 湯船に浸かる時間がなくても、シャワーを浴びる数分間に意識的に体の感覚や音、香りに注意を向けるだけでも効果があります。
- 湯船に浸かりながら: よりリラックスしたい時は、湯船にゆっくり浸かりながら、全身の感覚や呼吸に深く意識を向けます。
- 体を洗う合間に: 例えば、頭を洗っている最中は頭皮の感覚に、体を洗っている最中は肌を擦る感触や泡の感覚に注意を向けるなど、「ながら」で実践することも可能です。
完璧を目指さないこと
マインドフルネスの実践において最も大切なことの一つは、「完璧を目指さない」ということです。お風呂に入っても、つい考え事をしてしまい、感覚に集中できなかった日があっても全く問題ありません。自分を責める必要はありません。「あ、今、心がさまよっていたな」と気づいた、そのこと自体がマインドフルネスだからです。
毎日行う必要もありません。疲れている時は、ただぼーっと湯船に浸かるだけでも良いでしょう。気が向いた時に、できる範囲で、例えば「今日は水の温度だけ意識してみよう」というように、小さく始めてみることをお勧めします。
忙しい一日を癒しの時間に変える
お風呂やシャワーの時間をマインドフルネスの実践に使うことで、単に体を清潔にするだけでなく、心の疲れも癒し、リフレッシュすることができます。この短い気づきの時間が、日々のストレスを軽減し、穏やかな気持ちで夜を過ごし、質の良い休息をとる助けとなるでしょう。
今日のお風呂の時間に、ぜひ試してみてください。