何気ない「置く」「しまう」時間を心のゆとりに:日常マインドフルネス実践
忙しい日々の中では、一つ一つの動作を無意識のうちにこなしていることがほとんどです。スマホを机に置く、本棚に本をしまう、調理器具を引き出しに戻すなど、これらの「置く」「しまう」という行為も、多くの場合、次の行動へ急ぐための単なる通過点になっているかもしれません。
しかし、これらの何気ない瞬間に意識的に注意を向けることは、忙しさで散漫になりがちな心を「今ここ」に戻し、心のゆとりを取り戻すための有効な方法となり得ます。今回は、「置く」「しまう」という日常的な動作にマインドフルネスを取り入れる方法をご紹介します。
「置く」「しまう」マインドフルネスの実践方法
マインドフルネスとは、現在の瞬間に、意図的に、そして評価をせずに注意を向けることです。この「置く」「しまう」マインドフルネスも、特別な場所や時間、道具は必要ありません。
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意図を持つ 物を置く、またはしまう行為を始める前に、心の中で静かに「この瞬間に注意を向けよう」と意図します。これは、自動操縦から意識的な行動へと切り替えるための第一歩です。
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感覚に気づく 実際に物を手に取り、置く場所やしまう場所へと運び、行為を完了させるまでの過程で、体に起きる感覚に意識を向けます。
- 手に持った物の重さ、形、表面の感触はどうでしょうか。
- 腕を動かすときの筋肉の感覚はどうでしょうか。
- 置く場所やしまう場所に視線を送るときの目の感覚はどうでしょうか。
- 物が場所に触れるときの音に気づきます。
- 指先から物が離れるときの感覚に注意を向けます。
- その場の空気の温度や流れ、光の当たり方など、周囲の環境にも軽く注意を向けてみます。
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思考や感情に気づく 行為の間や前後に、頭の中に浮かんでくる思考や、心に生じる感情に気づきます。「早く終わらせたい」「次に何をするべきか」「これはどこにしまうんだっけ?」といった思考や、「面倒だな」「やり終えてほっとした」といった感情が浮かぶかもしれません。それらを良い悪いと判断せず、「あ、思考が浮かんでいるな」「こんな感情があるな」と、ただ観察します。
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行為を終える 物が所定の場所に置かれた、またはきれいにしまわれたことを確認し、その瞬間の感覚と共に行為を終えます。
なぜ「置く」「しまう」マインドフルネスが効果的なのか
この実践は、私たちが日常的に行っている無意識の動作に意識の光を当てることで、自動操縦の状態から抜け出し、「今ここ」という現実にグラウンディングするのを助けます。心があちこちをさまよっている状態から、目の前の具体的な瞬間に注意を戻すことで、思考のループが一時的に途切れたり、心が落ち着きを取り戻したりすることが期待できます。
また、「置く」「しまう」という行為は短時間で完了するため、忙しい合間でも取り組みやすく、マインドフルネスを日常生活に無理なく組み込む入り口として適しています。
日常のどんなシーンで活かせる?具体的な実践例
「置く」「しまう」マインドフルネスは、本当に様々な日常シーンで実践できます。
- 仕事の合間: デスクに書類やペンを置くとき、ノートパソコンを閉じるとき。
- 家事の途中: 洗った食器を食洗機に入れたり棚に戻したりするとき、調理器具を片付けるとき、洗濯物をたたんで引き出しにしまうとき。
- 帰宅時: 鍵やカバンを定位置に置くとき、靴を脱いで揃えるとき。
- 育児中: 子どもがおもちゃで遊び終えた後、一緒におもちゃ箱にしまうとき、絵本を本棚に戻すとき。
- 休憩時間: 飲み終えたコップをテーブルに置くとき、読み終えた雑誌を重ねるとき。
- 就寝前: ベッドサイドテーブルに眼鏡や本を置くとき。
これらの例のように、毎日必ず行う「置く」「しまう」という行為は数多くあります。その中の一つ、あるいはいくつかを選んで意識的に実践してみましょう。
続けるためのヒントと完璧を目指さないこと
初めて「置く」「しまう」マインドフルネスを試すとき、あるいは実践している最中に、気が散ったり、つい無意識に動作を終えてしまったりすることはよくあります。それは自然なことであり、何の問題もありません。マインドフルネスは「完璧にできること」ではなく、「気づき」の練習です。
- もし気が散ったら、「あ、気が散ったな」と気づき、優しく意識を「置く・しまう」という行為に戻しましょう。
- まずは、一日の中で最も頻繁に行う「置く」「しまう」行為(例: スマホを机に置くとき)一つに絞って意識してみるのも良い方法です。
- 最初は短い時間でも構いません。慣れてきたら、もう少し丁寧に意識を向ける時間を長くしてみましょう。
- 「今日は全くできなかったな」という日があっても、自分を責める必要はありません。ただ、「そうだったな」と受け止め、また明日試せば良いのです。
「置く」「しまう」という小さなアクションに意識を向けることから、日常の忙しさに流されがちな心を「今ここ」に留める練習を始めてみませんか。この小さな気づきが、あなたの毎日に穏やかな心のゆとりをもたらしてくれるはずです。